4.医用器具の滅菌
確実な洗浄によって汚染は除去され、汚染の中に含まれていた細菌やウイルス等の微生物も除去されていますが、再処理される器具の使用目的と使用部位に応じて次のステップである消毒もしくは滅菌処理が実施されますが、クリティカル器具は滅菌処理が必要となります。
医療機関において採用されている滅菌法は、大別して高温滅菌と低温滅菌の2つです。下表に各滅菌法の原理、特徴について示します。このうち歴史が長いのが飽和蒸気を用いる高圧蒸気滅菌です。
患者の処置に使用される医用器具で再使用される物の材質は、金属製がほとんどであるのでその滅菌には高圧蒸気滅菌法が採用され、器具の材質がプラスチックやゴムの場合には、低温滅菌の酸化エチレンガス滅菌または過酸化水素ガス滅菌を用いることとなりますが、どちらも基本的に化学物質であるのでその特性、材質への影響、残留した場合の人体への影響等を十分考慮する必要があります。
従って滅菌法選択の第一優先は高圧蒸気滅菌となります。
滅菌法 | 原理 | 特徴、使用上の注意 |
---|---|---|
高圧蒸気滅菌 | 飽和蒸気による蛋白質の熱変性 | 滅菌条件(115~135℃、30~8分)に耐えられれば最も安全で確実な方法 滅菌物を詰め込みすぎたり、空気が残留したりすると滅菌が阻害される |
酸化エチレンガス滅菌 | 酸化エチレンによる蛋白質のアルキル化 | 高い浸透性と比較的低温で滅菌が可能 残留毒性があるためエアレーションが必要 特定化学物質であるため、法的対応が必要 |
過酸化水素ガス滅菌 | 過酸化水素から生じるヒドロキシラジカル等による細胞膜などの損傷 | 低温、低湿下で滅菌が可能 天然素材の布、紙、セルロース製品、液体、粉末は不可 |
高圧蒸気滅菌法のタイプ
高圧蒸気滅菌には次の2つのタイプがあります。
- 重力置換タイプ:前もって空気を排除せずに蒸気を挿入または発生し、重量差でドレーンとともに空気を排出します。高圧蒸気滅菌の草創期のタイプで構造がシンプルであり、現在では一般的に卓上型のタイプに採用されています。
- プレバキューム(事前真空)タイプ:真空システムにより予め空気を強制的に排出します。強制排気を複数回行うことで被滅菌物が管状構造の場合、内部の空気排除が効率よく実施でき、大型のタイプに採用されています。
近年の処置に用いられる医療器材は構造が複雑、高度化され滅菌が困難なものが増えているので、プレバキュームタイプの滅菌器使用が推奨されています。